2004-11-22

_研究

いわゆるアカデミックな研究というやつから離れて、 もうしばらく経ちました。 あれだけ大学に居たもんだから、 そう簡単にビジネスの世界の価値観に溶け込めるのか知らん、 と感じたものです。

しかし、「朱に染まれば赤くなる」とか言いますが、 人間しばらくすれば慣れちゃうんですねー。 逆にずっと大学に居る人達に「何をちんたらと」などと考えちゃうことがあって、 あちゃーと反省したりもします。

一応肩書が「Research Director (Directeur de R&D)」なんで、 あいかわらず研究者には違いないんですが、 やっぱり実務は違いますよね。 学術研究は基本的に知的好奇心(と予算と権威(笑))で行なわれるものですが、 企業の研究は利潤に結び付いてなんぼの世界ですから、 純粋な研究に近いことやってる時間より、 大学の研究から見れば「作業」と言うしかないようなことをたくさんやらなきゃいけませんからね。

まあ、そんなわけでしばらく前まで研究っぽいことより、 開発・保守に近いことをやってたんですが、 ここ最近は研究らしき仕事をしています。 おかげで、自分の価値観がいかに変化してしまっていたか、 研究と実務の違いが何か、悟りを得た気がするほどです。 いろいろやるってのは良いことです。

研究の難しさは生活と仕事が完全一体化現象を起こすところだと思います。 一度本気でやる気になったら、 必ず心のどっかにひかかっていて、 どうも気が休まらないもんです。 わざと関係ないことをやっていても、 どっかでアイデアを得てしまったら、再びその事を考え始めてしまいます。 私が真面目すぎるからかもしれませんが。 いや、研究に対しては、ということですけど。

どうやれば出来るか、どれぐらいの時間が必要か、 明確に分かっている事は、終ってなくても、あんまり気にならないものです。 すぱっと忘れてしまえます。 そのまま思い出せなくなったら困りもんですが。

それに対して、答のよく分からない問題に取り組むのは、 自分との闘いだなあと感じます。 これは大学に居た頃にも思ったことですが、 研究者をやるというのは、常に自分を試され、 脳味噌が腐り始めたら役立たずになるという意味で、 非常に苛酷です。 プレッシャーを感じざるを得ません。 あの世界にずっと居る人を正直尊敬しますね。 そういう人は大変に自信があるのか、 あんまり何も考えてないのかのどっちかなんでしょうけど。

頭脳労働をやっている限り、 頭が悪くなったら駄目なのは同じなんですけど、 価値の劣化速度が全然違うと思うんですよ。 実務は学問の世界ほど新規性は必要ありません。 手を動かして、お客さんとコミュニケートして、 新人教育やって...と、既得技術や知識、人間関係といった、 また別な側面があるからなんですね。 もちろん学問でもそういう要素は多分にあるわけですが、 比重が違います。

あんまりまとまらないけど、 私は今はビジネス方面に近い世界に住んでますが、 アカデミックな人達の存在価値や社会的意義ってもんを忘れてしまわないように気を付けたいと考えています。

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