2007-03-31

_ 最近読んだ本

長くさぼってましたが、 今回は 西澤保彦 の作品ばかりで。 出版順で行きます。

解体諸因 解体諸因

デビュー作。 割とオーソドックスな本格ものが中心で、 本格好きなら読んで損はしないでしょう。 多くのミステリー作家は初期の方が傑作を生みやすく、 晩年はアイデアが枯渇するのか、つまらなくなる傾向があります。 この人もそうなんじゃないかと思います。 さすがにデビュー作は新奇性のあるアイデアも盛りこまれていて、 ストーリー作りはいまいちな感はあるものの、 良い作品に仕上がってます。

完全無欠の名探偵 完全無欠の名探偵

彼の作品は「超能力もの」と「だべっているだけの探偵もどき」の二種類に分類できますが、 これは「超能力もの」の最初の作品。 うーん、私は正直この作品は出来が悪いと思います。 脇役的な謎をたくさん詰め込まれていますが、 そっちは「思考を喚起して」「それっぽい説明を想像して」「本人がそれで納得してしまう」で終わりばっかり。 そして、一応中心になっているはずの主題の方は簡単すぎてつまらない。

個人的に、本格推理は必要十分条件をフェアに満たすことが重要だと思ってます。 彼の作品は「十分条件」を満たすだけで納得したら終わり、というパターンが多くて、そりゃそうかもしれない可能性を考えるだけなら何でもありだよ、 と感じるのです。 本格だと思って読むと後悔するかも。

七回死んだ男 七回死んだ男

通常代表作と呼ばれる作品であり、 すばらしい傑作。 これは絶対読むべし。

超能力もので、「完全無欠の名探偵」と同じく、 体質タイプ。 本人が意識的に発動/停止できないので、能力とは呼べないとか、何とか。 こいつはジョジョ第四部のバイツァ・ダストみたいな現象なんだけど、 ジョジョの方がパロディなのかな?

ストーリー展開、どんでん返し、盲点をつく論理的な解釈、 どこをとっても完璧に近い。 これを三作目で書いてしまったのだから、 後で超える作品がないと揶揄されても仕方がないでしょう。 これ以上の作品を書くのはおそろしく難しいに違いありません。

人格転移の殺人 人格転移の殺人

装置を使っているので、超能力ではないけれど、ノリは同じな作品。 駄目。 これは駄作。

着想はいいと思うんだけど、 自分でも十分に活用しきれなかったという印象ですね。 本格好きなら、犯人も方法も思い切り初期段階で分かってしまう。 せっかくの舞台が出来上がってから、単なるどたばた劇になってしまい、 見るべきものがない。 せっかく人格の不明な状態が作れるんだから、 もっとオカルト調の雰囲気を作ってほしかった。

幻惑密室—神麻嗣子の超能力事件簿 幻惑密室—神麻嗣子の超能力事件簿

チョーモンインの最初の作品。 長編だけにトリックにもう一捻り加えてほしかったとは思うけど、 結構面白い。 佳作。

実況中死—神麻嗣子の超能力事件簿 実況中死—神麻嗣子の超能力事件簿

トリック自体はまあまあだけど、 小説としては良い作品。 叙述トリックを採り入れてみたかったんだろうなあ。

ナイフが町に降ってくる ナイフが町に降ってくる

体質で超能力タイプ。 「七回死んだ男」と違って、こっちは能力の縛りがきつすぎる。 だから、ちょっと冷静になれば、誰が犯人かまる分かり。 本格としては機能しない。

個人的好みの問題ではありますが、 この作品の副主人公である女子高生がむかつく。 めちゃ自己中心的な人間で、自分に酔っているタイプ。 よくこういう人間を描けるなあと感心する一方で、 生理的嫌悪を感じてしまいます。 もっともガキというのは、みんな大なり小なり、そういうものなのかもしれません。 無邪気な残酷さ。 大人になって、それが邪気のある残酷さに変化するだけで。

念力密室!—神麻嗣子の超能力事件簿 念力密室!—神麻嗣子の超能力事件簿

チョーモンイン・シリーズではこれが一番良い作品かも。 「誰が」よりも「なぜ」に重点を置くというスタイルがうまく行ってます。

夢幻巡礼 夢幻巡礼

チョーモンインの外伝との位置づけらしいですが、 まあ、かなり違います。 一応本格的な要素も採り入れられていますが、 基本的にはサイコもの。 うーん、どうだろう、個人的にはプラスマイナスゼロってところかな。

転・送・密・室—神麻嗣子の超能力事件簿 転・送・密・室—神麻嗣子の超能力事件簿

順当にいい感じの作品。 それなりに楽しめます。

人形幻戯 人形幻戯

これも同様。 読む価値はあります。 可もなく不可もなく。

神のロジック 人間(ひと)のマジック 神のロジック 人間(ひと)のマジック

アンフェアだという謗りもあるようですが、 私はそうは思わなかったですね。 確かに全部は分からないかもしれないけれど、 誰がどうやって、までは分かるようになってます。 敢えて言うならば、作品世界が暗すぎるのが嫌かな。

黒の貴婦人 黒の貴婦人

良作、だとは思いますが、匠千暁シリーズの常で、 そうとも考えられる、だけで終わるところが、私には不満。

ソフトタッチ・オペレーション ソフトタッチ・オペレーション

「生贄を抱く夜」はあまりにつまらなさげなので、すっ飛ばして、 「ソフトタッチ・オペレーション」を読みました。 うーん、難しいな。 これを良い作品と思うかどうかは、何を求めているかに大きく依存していそう。 捻りがない。 でもまとまりはよい。 微妙な作品です。

これら以外で読んでみたいなと思うのは、 「いつか、ふたりは二匹」かな。 文庫化されないかなー。

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