2006-08-14

_ 停電後の自動復旧

いきなり停電をくらっても平気なマシン/勝手に電源入るマシンを一台置いておいて、 イーサネット経由で電源オンとか。

_ ないものねだり

この件についてはもう書かないことにしようと思っていたのですが、 せっかくたださんほどの方からコメントを頂いているので、 少し補足というか、私自身の考えをつらつらと書いてみます。

元記事についてですが、私は別段海外に行けと煽っているわけではありません。 日本に閉じ籠る必要はないんじゃない?とは言っていますが、 海外へみんなで脱出しよう!とは言ってません。 本来の論点は「本当に日本はそんなに悪いのか?そんなことはないんじゃないか?」ということです。

日本を出る、出ないは個人個人が自分の価値観や状況にしたがって決めれば良いことです。 日本が駄目だから出るとは限らないでしょう。 単に他にもっと魅力的な場所があって、それがたまたま外国であった、 というケースだってあります。 確かに長期滞在者の中では「日本が嫌い」あるいは「日本人が嫌い」な人が若干多いような気はします。 しかしみんながそうではないし、そうなる必要もありません。 実際私自身、以前から宣言しているように、いずれまた日本に戻りたいと考えてます。

私自身がフランスに来た動機は、これまた前にも書いているように、 なかなかに複雑で、自分でもよく分からないところがあって、 簡単には言えません。 当時日本は不況の真っ只中で、非常に暗いムードが漂っていて、 あんまり居心地がよろしくなかったのは事実です。 しかし日本が嫌いだから出たわけではないのは確実で、 この文脈では、日本とは異なる文化を経験したかったから、 というのが大きいです。

さて、たださんは

エンジニアである以上、日本で実現できないことがあるとは思えないのです

とおっしゃられてますが、技術的あるいは理論的側面からは非常に正しい御意見です。 コンピュータのありがたいところは、 標準、互換性、汎用性などの賜で、 どこでも大体同じことが出来るということです。 だからこそ、国際的に通用するものが生まれる訳です。 そういう意味においては、 電力供給、インターネット接続、ハードウェア調達などのインフラが非常に安定、充実している日本は、 世界最高水準の環境であって、 日本で出来ないことが他の国で可能になる、ということはあまりないです。

しかしながら、エンジニアの仕事が純粋に技術的、理論的であることはあまりありません。 そういう仕事は普通研究者がやることです。 コンピュータは所詮ひとつのツールであって、 エンジニアの仕事はコンピュータを現実の問題に繋ぎ合わせてあげることです。 そのためエンジニアは「技術+何か」をやることが求められるのです。

この「何か」が日本だけで得られるものであるかどうかは、 もはやケース・バイ・ケースです。 中には日本だけで十分な場合もあるし、全くそれでは話にならない場合もあるでしょう。 日本に居ながら、文献や情報交換によって十分補える場合もあるし、 そうでないこともあるでしょう。

例えば、Rubyの場合、日本の言語だけ見ていては、決して生まれ得なかったはずです。 しかしほとんどは文献研究で補えるでしょうし、 メールなどで議論すれば、無理に外国へ足を運ぶ必要はないでしょう。 偉大な先人に直に会って、心地よい刺激を受けることは役立つでしょうけれど、 長期滞在が必要になるほどではないでしょう。

しかし、私のようにERPを扱っている人間は日本だけでは難しいです。 法律や会計の分類などは文献研究でも得ることが出来ますが、 商習慣を現地に行かずして学ぶことは不可能です。 そういったことはほとんど文書化されていないし、 仮にされたとしても、文献だけで理解できるほど簡単ではありません。 これこそ、 日本で作られたERP等の社内事情に深く関係するソフトウェアが外国では成功できない理由であり、 また外国産が日本の会社に受け入れられにくい原因でしょう。 やはり現地の事情を分かっている人間がやらなければならない仕事というのもあるものです。

ところで、たださんは国産に拘っているところがあるように見受けられますが、 私はそれが重要なことだとは思いません。 フリーソフトウェア/オープンソースが業務に浸透しつつある現代においては、 国産であることの意味が薄らぎつつあると感じます。 不自由なソフトウェアの場合、 ライセンス料の支払い、また、ソースコードが入手できないためにノウハウが国内に蓄積できない等、不利な条件がたくさんあり、 経済的に望ましくないでしょう。 しかし自由なソフトウェアでは誰が実際に作ったのかは関係がないはずです。 どこで作られていても、誰でも利用し、開発し、改変することができます。

EUに住み始めて以来、私自身の考え方も次第に変化してきましたが、 今の私にとっては、国境はそれほど深刻な存在ではありません。 自分の家族や友人が住む国を大切にすることも重要ですが、 エンジニアはあまり国という枠に視野を狭まれないようにしてもらいと考えています。 もしも国際的に通用するソフトウェアを作り出したいと願うならば、 自分の国だけを見ていてはいけません。 そういう観点で、長期的でも短期的でも、 多少他の国を味わうことはマイナスにはならないのではないか、 というのが私の見解です。

本日のツッコミ(全3件) [ツッコミを入れる]
_ ただただし (2006-08-15 11:35)

>たださんは国産に拘っているところがあるように見受けられますが
いや、それはありません。
出発点はおくじさんと同じで、「日本ってそんなに悪い?」という疑問なんです。悪いと思い込んで海外に脱出しても、がっかりするだけじゃないのか、と。その反証として、日本発の「良い何か」があるならいいなと思っています。

_ 井上 (2006-08-15 15:20)

> 停電後の自動復旧

むしろ停電を検出して、電源 button を物理的に押すカラクリを用意するとか。

_ okuji (2006-08-15 22:09)

誤読してしまったようで、ごめんなさい >たださん

しかしオンラインで意図を正確に伝えるのって難しいですよねえ。私が書いたことも随分誤解されているようでしたし...

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